「そしじ」という漢字は昔からあり、GHQに消されたというのは本当なのか。

GHQに消された説

結論から言うと、“GHQに消された”という説は、限りなくデマである。

”昔から存在した”、”GHQに消された漢字”と言われるようになったのはいつからだろうか。

これらの情報の根源について追求し、デマと言える根拠について解説していく。

「そしじ」は”昔から存在した”と言われ始めた根源

”昔から存在した説”についての発言で、最も古いものは2021年3月1日にアップされたYoutubeである。

現在削除済み

※2024年2月時点では視聴が可能だった

このYoutubeの冒頭で、

今の辞典では出てこない、古い辞典で見ると出てくる」との発言がある。

この古い辞典が、どれを指すのかはっきりしていない。だが、漢和辞典の最高峰と言われている、”大漢和辞典”に掲載されていないことは確かである。

『大漢和辞典』
使われなくなった漢字(旧漢字)、先秦時代の古典、歴代史書(史記・漢書)、文選、さらに唐・宋の詩文から明・清の小説などといったあらゆる時代の語彙を網羅し、仏典・医書・本草学・法制・地誌・日本の漢詩など多様な文献を用いた辞典

引用:ジャパンナレッジhttps://japanknowledge.com/contents/daikanwa/

このように謳っているだけあって、昔から日本に存在した漢字なのなら、載っていないはずがない。

この時点で、”昔から存在した”と言う発言に違和感を覚える。

話を戻すが、ネット上ではこの日を境に”そしじは昔からあった漢字だ”と言う認識に変わっている。

「そしじ」は”GHQに消された文字”と言われ始めた根源

最も古い情報について

確認できている中で最も古い情報(記事)は、2022年12月に投稿されたこちらの記事である。

この記事では、”1つの説としてGHGに消された文字と言われています”との記述があった。

これより前の発言を探すため、SNS(インスタ、X(旧Twitter))を調査してところ、”GHQに消された文字”と発言があったのは、2023年以降のものばかりだった。

2023年3月〜5月ごろから”そそじ”について発言する人が増え始め、「GHQに消された文字と言うのは有名な話だが〜」となっている。

ついには、「文字のパワーが強すぎてGHQに消された」と、言うものまで現れ始めている。

そもそもGHQに消された文字って何?

GHQ(連合国軍総司令官)に消された文字とは、漢字の使用を制限したことで使われなくなった文字のことを指す。

”消された”という表現ではなく、GHQがローマ字の推奨や文字の簡易化を進めたことで、”難しい漢字が使用されなくなった”といった方が正しいのかもしれない。

以下は、1946年3月31日に発表された米国教育使節団報告書、国語の改革についての資料である。

新聞・雑誌・書籍およびその他の文書を通じて、学校および一般社会ならびに国民生活にローマ字を採用するための計画を立てること。

<国語の改革>

 第一次教育使節団の勧告以後、日本の国語改革はある程度の進歩を見せている。多くの小・中学校でローマ字が教えられ、当用漢字音訓表が採用された。これによって漢字は理論的に制限され、かなづかいも改良され、ローマ字の使用は増加し、口語が公文書に使用されるようになった。国立国語研究所が国語ならびに国語と国民生活間の関係を科学的に研究するために設立された。しかしこれまでの改革は必ずしも十分とはいえない。現在のところ改革は、国語そのもののほんとうの簡易化・合理化には触れないで、かなや漢字の単純化に終ろうとしている。

国語改革については次のように勧告をする。

 一 一つのローマ字方式が最もたやすく一般に用いられうる手段を研究すること。

 二 小学校の正規の教育課程の中にローマ字教育を加えること。

 三 大学程度において、ローマ字研究を行い、それによって教師がローマ字に関する問題と方法とを教師養成の課程の一部として研究する機会を与えること。

 四 国語簡易化の第一歩として、文筆者や学者が当用漢字と現代かなづかいを採択し、使用するよう奨励すること。

文部科学省ホームページ-米国教育使節団報告書(一部抜粋)-https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317998.htm

日本国民の目に届く、雑誌や教科書の仕様を変えることで、制限、禁止、廃止という意識なく、日本の漢字文化を徐々に無くし、ローマ字の使用を促進しようとした裏の意図が伺える。

だが報告書の通り、ローマ字への完全な移行は、失敗に終わったようだ。

そしてこれが、 GHQに漢字を消されたと言われる元である。

そもそもGHQが関わる前から、日本では漢字をなくそうと言う動き(漢字廃止論)があったため、GHQの働き(国語の改革)が全ての言語や漢字に変化をもたらしたとは言い難い

”昔からあった説”が信憑性に欠けるわけ

前述した通り、辞典に載っていることを確認できていないという点で信憑性に欠けるものだが、もう一点ある。

youtubeにて『昔からあった』と発言していた”N氏”が、後ろの掛け軸について「これは佐賀県で病院を営む”Y先生”に書いてもらったものだ」と発言している。
※現在削除されているが、動画の映像の中に”そしじ”と漢字で書かれた掛け軸があった。

”Y先生”が矢〇〇〇氏だとしたら、にんげんクラブとのつながりが見えてくる。

そう、にんげんクラブとは、2010年のウィークリーレポートにて『”そしじ”は造語』と発言したコミュニティである。

十何年も前に”造語”と発言しているコミュニティとつながりがあることを考えると、信憑性に欠ける。

このようなことから『”そしじ”が昔から存在した』はデマであることが濃厚となり、ある日突然発生した説にすぎない。

そして、近年作られた”造語”と言うことは、GHQが消したくてもその時代には存在しないのだから、”GHQに消された”もデマ情報となる。

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